第6回 スタイリスト 河面乃浬子さん
乃浬子さん:『ひきこもり大学』(共著)とかを読んでいただくと、私は「外こもり」だったって書いてあるじゃない。ずっと家の中で疎外感を感じてて居場所がなくてね、外に場を求めて生きてきたの。で、実際にニューヨークまで「外こもり」しに行っちゃったという(笑)
私:そうだったんですか!伺っている限り、乃浬子さんのお母様って、乃浬子さんのトラウマの1つでもあったんじゃないですか?
乃浬子さん:そうね、私的にはトラウマというより、人生の課題だったと解釈してるけど。母は世間に対して完ぺきな良い人仮面を着けて生きた人で、感情のはけ口を一番稚拙な私に向けることで心のバランスを保っていたんだと思うの。いつも笑顔で知性溢れる、誰からも憧れられる人だったのよね。で心の中は他者との比較から嫉妬でいっぱい。不機嫌な祖父母によく怒られては、よく海に向かって泣いていたなぁ。そんな家族の言動や顔色を下から見上げては、大人ってなんでこんなに外面と内面が違うんだろう?変なの!って思ってた。
私:なかなか二面性が強いご家族ですね。
乃浬子さん:ホントはこの人たち、ジキルとハイドじゃないか?って思ったりしてね(笑)
私:それって、子どもの頃からですよね!? けっこう今、ヤングケアラーが問題視されるようになりましたし、なかなか深刻な問題だと思います。
乃浬子さん:そっか、じゃ私は時代の先駆けだったんだね(笑)でも、いつの間にかそんなオトナたちに迎合してる自分が居て、大っ嫌いになっていったの。学校でいじめられたけど家には絶対にひきこもれなかったしね。「家族への反発」というジェットエンジンを搭載し続けたことで、外へ外へと意識が向いて、結果的に色んな経験をさせて貰った感じ。
私:反発?
乃浬子さん:家族への反発は、そのまま日本の社会通念への反発になるでしょ。テストの点数でお勉強の出来不出来を評価するとか、頭のよさや賢さを順位を決める価値観に猛反発したからこそ、それぞれの個性という点数も正解も無いもの信頼したかったのね、きっと。
私:反発を逆にバネにして生きて来たわけですね。
乃浬子さん:そうそう。私がやってきたことってほぼ反発からの行動だったかも。でもね、人間本来の在り方が「自律の愛」だとすれば、反発は依存の拗ねた怒りなんだと思う。だから、スタイリストしてたけど生き辛くなって外こもり、ニューヨークの5番街でがんばっても、子宮筋腫とか乳癌とかやらかして疲れちゃって帰国。帰ってからウツにもなって。でも去年までは相変わらず目を背けて外こもって生きて来たのだけれど、コロナで、どうにもこうにも母と向き合わざるおえなくなって。そのおかげで悔いなく母を看取ることが出来たの。こんなユニークすぎる経験をいっぱいさせて貰えて、我ながらずいぶんスリリングで面白い人生を選んで生まれたなっと。だったら活かさなきゃもったいないもんね(笑)
私:そういう生きづらさを積み重ねていって、ライフシフトとか、今色んな活動をやっているじゃないですか。それで、色んな人に必要とされていて。
乃浬子さん:そんなふうに思っていただけたら嬉しいんだけど。私自身が訳わからずに息苦しかったように「自分は不甲斐なくてこのままじゃダメだ。」ってネガティブエネルギー満載の方たちに、肩の力を緩めて深呼吸をしようよ。「あ~こんな自分でもいいのかも。」って気付いて、ありのままの自分を少しずつ受け取ってもらえたら。それが私のお役目だからね。
私:そういえば私も一度「ひきこもりライフシフト」に参加させていただいて。実は自分の容姿がずっとコンプレックスで。
乃浬子さん:うんうん、参加してくれたとき、そんなこと言ってたよねぇ。
私:そう、自分のこと好きじゃなかった。それで、ライフシフトでイメチェンしたら、職場の人とかにも「似合ってるじゃん、可愛くなったね!」って言われて。あれから、洋服屋さんを見て歩くのが好きになって、色々試着してみたり。おしゃれが楽しみになりました!
乃浬子さん:わぁ!後日談を聞くのが一番嬉しい!!あっそれぜったい書いてね(笑)
私:OKです(笑)そういえば、けっこう、自己否定が強い人って、容姿にコンプレックス持っている方多いと思うんでよね、私の肌感覚だと。
乃浬子さん:そうそう、だからさ、「ひきこもりライフシフト」で最初に、「あなたはどう生きて行きたいの~?」とか「どう在りたい?」って聴くじゃない。それって、実は未来の自分に向けて投げかけるゆる~い意思表明みたいなものだから、自分の中に在っても今は気づいていない「憧れの種」が、未来の自分のイメージに繋がって開花していくのよね。
私:無意識に「自分にはあんなスタイルはぜったい無理だろう」とか思ってしまって、そもそも考えられないんですよね。あのとき私も言葉に詰まった気がします。
乃浬子さん:そうだよね。カッコイイとか、可愛いらしいとか、フェミニンとかを具体的に体感するには、自分の中に要素がないって信じていると、「そんな言葉を口に出してはいけない」という自動ブロックが発動して真っ白になるの。でも憧れっていうのは、自分の潜在意識の奥に必ず在る。だからこそ緩むと憧れの感情が沸き出てくるんだよね。
私:なるほど、すでに無意識で可能性を感じているからってこと。
乃浬子さん:そう、たとえば自分の女性性を受け取りたくないと思ってる人は、一旦それを受け取ってあげてほしいの。男性性と女性性のバランスは人それぞれだけど、どんな自分でもそれでOKだよって、なんでもアリだよーって、自分をまるっと受け取ってあげることが、自分をそして周りも一緒に赦して癒やしてあげることが出来ると思うのよね。
私:受け取れることで、憧れとか可能性が出てくるっていう。それがないと、未来が見えなくなっちゃいますよね。
乃浬子さん:そうなの。実は自信って過去の実績からつくのではなくて、自分の未来の可能性を無条件で信じてあげることが本当の自信なんだよ。深いでしょこれ(笑)
私:深い!
乃浬子さん:そもそも私が、広告のスタイリストをしていて、かなりメジャーなクライアントさんの仕事を頂いて活躍してて。でも反面どんどん自己解離が起きてきちゃってね。
私:自己解離?
乃浬子さん:不思議なんだけど、自分を受け取ってないと、活躍すればするほど、「こんな私なんかがこんなすごいことをやっていていいわけがない」みたいな意味不明の自己疎外が起きてくるわけ。するとどんどん社会の中で生き辛くなって、今思えばウツの初期かなぁ。
私:なんとなく「自分がいても申し訳ない」っていう思いから、違うところに。
乃浬子さん:今、多くの日本人が自己否定から居場所を見出せなくなっていってしまってるよね。私の場合、周りはウェルカムだったかもしれないのに、自分がそんなレベルに居る自信がなかったのよね。だから、自信がないっていうのは、自分が本来持っている天分や才能とか、積み上げてきたキャリアとか、そんな素晴らしい資質を活かせないの。それって、とってもザンネンで勿体ないと思わない?
私:居場所があっても活かせない。活かす機会があっても自信がないと動けないんですよね。
乃浬子さん:そういうこと。どんどん活かしてあげないと。それが自分を大切にしてあげることだと思う。今、目の前のことを丁寧にやっておけば、後はもうお任せで良いや~と思うようになったの。結局自分が今、心地よく居れば、あとの状況は与えて貰えるから。
私:そこでチャンスが来た時に、ちゃんと掴むことが大事。
乃浬子さん:そう。だから自分を心地よく波動を高くして緩めておくと、チャンスが来た時におっ!これだ!!って、受け取ることが出来るでしょ。自分を活かして生きるって決める覚悟が、私は自律だと思うの。「相互依存」(Interdependence)って言う言葉があってね、お互いが自分にできることを提供して、双方を応援するっていうことなんだけど。
私:相互依存って言葉があるんですね。
乃浬子さん:ちなみに共依存とは真逆だよ。共依存はお互いを束縛するっていうことだから。
私:思うんですけど、「依存」って言葉が日本語だと悪く捉えられ過ぎているイメージがあって。依存が悪いことってなると、誰かに助けを求めることは悪いことだ、みたいな。全部自己責任として考えられてしまって、それどうなんだろうって考えます。
乃浬子さん:ほんとにそれ!結局そこなの。日本には「遠慮」という文化があるじゃない。相手に甘えちゃいけないというか、周りに体裁作らなきゃとか。そういえば療養中だった母がペンを落としたんだけど拾ってと頼めないくらい周りの目をを気にしてたなぁ。
私:えぇー!そんなに自分に厳しい方なんですね。
乃浬子さん:実はね、共依存の関係って自分に厳しくて娘にも厳しいってこと(笑)だから、共依存を手放して相互依存、つまりお互いが精神的に自律してて、応援し合える関係が最高にいいなっと思ってて。そんな場になったら良いよね、心地よい居場所が。
私:どっちか一方的に支配するんじゃなくて、お互いが助け合うっていう関係があって。
乃浬子さん:そう。私が教えてあげるって上から目線じゃなくて、お互いに自尊心を呼び起こしたくて。私がねあの「ひきこもりライフシフト」の場で嬉しそうにはしゃいでいるのは、みなさんからたくさんエネルギーを貰ってるからなのね。笑顔とか、さっきみたいに「お洋服選ぶのが楽しくなったよー」って、そんな一言が私の大好物なんだよね(笑)
私:支援する側・される側って分けると、多少なりとも上下関係ができるじゃないですか。そうじゃなくて、励まし合う関係っていうのはホントに大事ですね。
乃浬子さん:これからの風の時代は、自分の魂や心を大事にしていったり、相手を思い遣ったり、自分が愉しく生きることで、お相手へと波動が伝わっていったり。私は、ホンダのバイクや、パルコとかのスタイリングをしてたキャリアがあるでしょ。そのころをマテリアル(物質・目に見えるモノ)の時代と呼ぶなら、これからはスピリチュアル(目に見えないモノ)との良いとこ取りして融合しちゃうのが私の使命だって思って。物資が溢れてる今、それでももっともっとと言われ、皆さんがちょっと戸惑ってると思う。今のあなたじゃダメだから、コレを使わないと!って未来への怖れを喚起したり呪ったりする商法でしかモノが売れなくなったよね。振り回されて混乱している人達に、ライフスタイルの愉しみ方や、洋服でも人でもおんなじこと、出会ったご縁を活かそうねってシェアしたいの。
私:哲学を愉しむためのスピリチュアル。
乃浬子さん:そういうこと!ライフスタイルって哲学だからね。そもそも私、すご~くケチで(笑) 野菜とか皮から種まで丸ごと活かしたい。根っからのライフスタイリストでしょ。
私:素晴らしい!環境保全の分野からすると優等生ですよ。
乃浬子さん:そうだと思うわ(笑)例えば20%オフとかになっている食材に出会ったら、そっちを買いたくなるの。その子をなんとか使って活かしてあげたいのよね。もし廃棄処分になっちゃったら勿体ないというより、天寿を全うできないじゃない(笑)
私:ゴミ問題まで解決しちゃう!
乃浬子さん:あっはっは(笑)なので、その考え方の上での生き方が私のライフスタイリングに流れてるんだよね。その人が自分の資質に気付かないまま活かされないとせっかく生まれたのに勿体ないとか。使ってないお洋服や食材を活かしてあげないと勿体ないとかね。
私:なるほど。その人がすでに持っているものを活かすっていうこと。
乃浬子さん:そう、ライフシフトのときに必ず話すのは、私たちはどんなプロでも無いものは出せなくて。ただ内在するものを引き出して可視化するだけだよって。自分を受け取って心地よいライフスタイルを、一緒に愉しんでいきたいなっと思ってるの。
私:素敵な活動で。応援しています!
乃浬子さん:ありがとう!! 母を看取ってからいろんなことが観えてきてね。確かに一時、この生き辛さは「毒親」のせいだ!!って、そんな時期も普通に通過してきたけれど、今はね、母との関係をもっと俯瞰出来てて、母の子育ての視点から観てみれば、私は相当扱いづらい子供だったかもなぁって思う。そして、母もまた、母の両親や、父方の親(私の祖父母)との価値観がそぐわなくて世代間連鎖が起こっていたんじゃないかなっと。そんなこと感じたりしています。
私:なるほど!そういうことなんですね。
乃浬子さん:どちらか一方が被害者でも加害者でもなくて、さっき出たヤングケアラーとか、ひきこもり、80/50とか、ADHDどか、それにコロナも後押しして、問題っていう視点からだときりがないじゃない。だから「はいはい、で、どう生きて生きたいの?」って希望の方向へ、一緒に上を向いて歩いて生きたい。この指とーまれって言いながらね。
私:はーい、私もその指とまりまーす(笑)
0コメント